今週のおすすめ作品

 監督：ロバート・レッドフォード
 出演：クレイグ・シェイファー／ブラッド・ピット／トム・スケリット
 概要：真面目で秀才の兄と、自由奔放で魅力的な弟、正反対の兄弟を繋ぐのは牧師である父親に教えられたフライ・フィッシングだった。モンタナ州ミズーラの美しいビッグ・ブラックフット川を背景に描かれる家族のドラマ。

「私たちの家族では、宗教とフライ・フィッシングのあいだに、はっきりした境界線はなかった（In our family ,there was no clear line between religion and fly fishing.）」

ノーマン・マクリーン著、渡辺利雄訳「 マクリーンの川」集英社

 著者：アントワーヌ・ド・サン＝テグジュペリ
 翻訳：堀口大學
 解説：宮崎駿
 ジャンル：エッセイ
 概要：小説家であり飛行士でもあったサン＝テグジュペリが飛ぶことを通して出会った人々や、砂漠に不時着して生死を彷徨った数日の出来事、町の灯だと信じて星へ向かって飛んでしまった夜について書いたエッセイ。解説は宮崎駿「空のいけにえ」。

ぼくらは誤って、沈むに先立ち、ほんの数分間、地平線の靄の層と雲とのあいだに、わずかに見えた星の一つに、機首を向けていたのだった。

アントワーヌ・ド・サン＝テグジュペリ著、堀口大學訳「人間の土地」新潮社

 監督：ロバート・レッドフォード
 出演：ロバート・レッドフォード、クリスティン・スコット・トーマス、スカーレット・ヨハンソン
 原作：ニコラス・エヴァンズ
 概要：13歳のグレースはある日乗馬中の事故で片足を切断、親友を失くし、愛馬も深刻な怪我を負う。深く傷ついた娘と馬を救うため、グレースの母親はカウボーイに助けを求めてモンタナを訪れる。
 見所：モンタナの大自然、馬が人間の手を借りて恐怖を克服していく過程、理解し合えないと思っていた母娘が互いを見つめ直し家族の絆を結んでいく描写など、どこを切り取っても光る名作。

「モンタナの風に抱かれて」(C)Touchstone Pictures.

 著者：コリン・ヒギンズ
 翻訳：阿尾正子
 ジャンル：ロマンス
 概要：変わり者の青年ハロルド（19歳）と、破天荒な女性モード（79歳）。60歳差の二人は葬式で出会い、ハロルドは自由で生き生きとしたモードに恋をする。そして若い日をナチスの収容所で過ごしたモードの人生観がハロルドに影響を与えていく。哀しくもユーモアに溢れたロマンス小説。
 情報：映画化、舞台化もされている。映画は1971年にアメリカで公開され、今でもカルト的な人気を誇っている。2023年10月現在、黒柳徹子（モード役）と向井康二（ハロルド役）主演で舞台が公演されている。

 監督：サイモン・ラングトン
 出演：ジェニファー・イーリー、コリン・ファース
 原作：ジェーン・オースティン
 概要：田舎で暮らすベネット家の5人姉妹のうち、適齢期になった1番美人の長女ジェーンと、1番頭のいい次女エリザベスは舞踏会でそれぞれロンドンからやってきた裕福な男性と出会い……。
 見所：英国を代表する小説家オースティンの古典「高慢と偏見」をドラマ化。世界中で大ヒットし、放送時間にはロンドンの街から人がいなくなった（家でドラマを観るため）というエピソードまである。コリン・ファース演じたダーシーの人気もすさまじい。”高慢”と”偏見”ゆえにすれ違うダーシーとエリザベスの間の恋愛はもちろん田舎町の一癖も二癖もある登場人物たちが巻き起こす辛口なユーモアも見どころ。（全6話）

オースティンの作品は「分別と多感」「エマ」「説得」など、どの作品も古典でありながら根強い人気を獲得し続け、ほとんどの作品が映像化されている。

 著者：マリアナ・ザパタ
 翻訳：高里ひろ
 ジャンル：スポーツ・ロマンス
 概要：主人公ジャスミンはフィギュアスケートの選手で、いまいちな成績のまま26歳となりペアの相手にも捨てられた。周りからは引退を囁かれるようになっていたが本人は不屈の精神でもって練習に通い続けている。そんなとき親友の兄であり、犬猿の仲でもあるスター選手アイヴァンから1年間限定でペアを組みたいと申し出があった。アイヴァンのことは憎いが大会に出場したい一心で彼の申し出を受けることにしたジャスミンだったが……。
 見どころ：ジャスミンの苛烈な性格を好ましく思えるかどうかで評価が分かれる作品。彼女はとにかく負けを嫌い、己に厳しく、誰に差し出された手であっても跳ね除けて自分自身で立ち上がることを徹底している強い女性。スポーツに関連する知識や描写もリアリティがありおもしろい。一方でアイヴァンとの子どもじみた悪口の応酬は笑えて、なかなか縮まらないペアの距離ももどかしいようでいて楽しい。喧嘩ップルの翻訳に定評のある高里ひろ氏訳なのも見どころ。

メンタルが弱く太りやすい男子フィギュアスケート選手、勝生勇利（23）がトップ選手ヴィクトル指導のもと、世界制覇を目指す。

女子史上2人目にトリプルアクセルを成功させたトーニャ・ハーディングの実話を元にしたスキャンダラスな伝記映画。バービーを演じたマーゴット・ロビー主演。

 著者：ジャナ・デリオン
 翻訳：島村浩子
 ジャンル：ミステリ
 概要：凄腕CIAの秘密工作員フォーチュンは潜入捜査に失敗して命を狙われる身となり、ルイジアナの田舎町で”元ミスコン女王の司書”という設定で潜伏することに。目立たず静かにやり過ごすつもりだったが住みはじめた家の裏の川で人骨を発見してしまい、保安官に目をつけられた上に町を仕切る老婦人たちと共に事件の真相を追うはめに……。
情報：シリーズ6作目まで翻訳、刊行されている。

公式ガイドブックがKindle、U-NEXTなどから¥0で配信中。

ハードSFの巨匠ホーガン著・不朽の名作

 著者：ジェイムズ・P・ホーガン
 翻訳：池 央耿
 概要：月面で発見された死体は5万年前のものだった。この死体はどこからやって来た、何者なのか？ 調査チームへの参加要請を受けた物理学者ヴィクター・ハント、生物学者クリスチャン・ダンチェッカーらがこの壮大な謎に挑む。ハードSFの巨匠ホーガンのデビュー作であり、不朽の名作。
 情報：邦訳されていなかった「Mission to Minerva」が2023年冬に「ミネルヴァ計画（仮題）」として刊行予定。

アメリカ現代文学の巨人

 著者：トマス・ピンチョン
 翻訳：佐藤 良明
 概要：第二次大戦末期から終戦までのヨーロッパが舞台。動物、電球、人間など300名を超える登場人物が描かれる。その中でも中心人物として登場するアメリカ軍中尉タイローン・スロースロップの女性関係はV2ロケット落下と繋がっている。その秘密のためスロースロップはあらゆる組織に監視され、また彼自身も真実を追い求めてロンドンから大陸へ旅を続ける——先々で女性たちと関係を持ちながら。エロスの後ろにあるのは西欧近代の知と産業と暴力を象徴する〈ロケット〉のシステムだった。
 情報：26歳でフォークナー賞受賞。50年の作家生活でわずか7作という寡作、ほとんど知られていない素顔、そしてその難解さから新作刊行のたび世界中で話題になる。デビュー以来公の場に姿を現さず、文学賞の授賞式には雇ったコメディアンを替え玉として出席させスピーチの代わりにジョークを言わせたことも。

綾野剛×齋藤潤主演で1/12〜映画上映中

 著者：和山 やま
 情報：聡実役＝齋藤潤、狂児役＝綾野剛で実写化。
 概要：合唱部の部長・聡実は大会の会場でヤクザの狂児に突然「カラオケ行こ！」と誘われ拉致される。狂児は組長が主催するカラオケ大会の罰ゲームを回避するために歌がうまくなりたい39歳。一方聡実は美しいソプラノで歌っていたのに最近声変わりがはじまって悩んでいる15歳。カラオケへ通ううちに二人の間には奇妙な友情が芽生えていく。

全米250万部、全世界600万部突破

 著者：ボニー・ガルマス
 翻訳：鈴木 美朋
 ドラマ化：『レッスン in ケミストリー』はApple TV+にてブリー・ラーソン(『キャプテン・マーベル』)が主演・製作総指揮を務めた
 概要：1960年代アメリカ、化学研究者エリザベスは保守的な男社会でもある科学界で奮闘していたが、上司、同僚たちからの嫌がらせやハラスメントの末に研究所を追い出されてしまう。無職・未婚のシングルマザーとなってしまった彼女だったが、テレビの料理番組「午後六時に夕食を」で料理指南する仕事をゲット。「セクシーに、男性の気を引く料理を」という要望を無視し、科学的に料理を説くエリザベス。それは意外にも視聴者の心を掴んでいった。「料理は立派な科学(サイエンス)だもの。まさに化学(ケミストリー)よ」

3000マイルのアラビア砂漠を横断するエンデュランス

 監督：ジョー・ジョンストン
 主演：ヴィゴ・モーテンセン
 概要：19世紀末、アメリカ西部のカウボーイであるフランクと野生育ちのマスタング種である愛馬ヒダルゴはウエスタン・ショーのドサ回りとエンデュランス競走の賞金で暮らしていた。あるときアラブの族長から「オーシャン・オブ・ファイヤー」に誘われた彼らは3000マイル（約4800km）のアラビア砂漠を横断することに。

国境三部作—The Border Trilogy—

 著者：コーマック・マッカーシー
 翻訳：黒原敏行
 概要：16歳のビリー・パーハムは家畜を襲っていた狼を罠で捕らえた。彼はメキシコから越境してきたに違いないその狼を故郷の山へ帰してやりたいという強い衝動に突き動かされ、父親の指示に反して狼と共に不法に国境を越えた。狼、馬、弟、なにかを成そうと、探そうとして越境する旅、ビリーは一つずつ失っていく。国境三部作の第二作目。